「最近はどうしてたんだい」 店に入ると、スカウトマンの原田が話しかけてきた。 仕事が立て込んでいて、なかなか競馬に向き合うことができない期間が続いた。気づけば年末が迫っている。急に冷え込んできていて、冬用のコートをだすべきか迷っている。 「花…
はてさて、菊花賞、どうしたものか。 「シュヴァルドール」のいつもの席で新聞を広げていると、アルバイトの花ちゃんが原田相手に話しているのが聞こえてきた。 「月に1度は、伊勢丹に行くんですよ。なんにも買わなくていいんです。ただ眺めているだけで幸…
店に入るとめずらしく鳩麦さんが話しかけてきた。 「先週は散々だったんだって」 私と原田は先週の3日間開催の週に京都に遊び、京都大賞典の日、ピカピカの京都競馬場に赴いたのであった。 「出場した馬の中で、ハヒフヘホから始まる馬名の馬が6番から10番に…
ドアを開けると、珈琲の香りが漂ってきた。 カウンターには今日もすでに、スカウトマンの原田が座っている。鳩麦さんがカウンターの向こう側で、ゆっくりと珈琲を淹れている。 開店10分前。 新聞をみていた原田が 「凱旋門賞ってのは、やっぱり日本の悲願っ…
喫茶「シュヴァルドール」のドアをあける。カウンターの中でマスターの鳩麦さんが、せわしなく立ち働いている。ちらとこちらをみてすぐに仕事にもどる。まだオープン前なのだが、常連の私たちはこっそり入れてもらっている。 カウンターにはすでにひとり、歌…