Palais idéal

物置のような雑貨屋のような、紙のような文のような

夢よ風よ

店に入るとめずらしく鳩麦さんが話しかけてきた。

「先週は散々だったんだって」

私と原田は先週の3日間開催の週に京都に遊び、京都大賞典の日、ピカピカの京都競馬場に赴いたのであった。

「出場した馬の中で、ハヒフヘホから始まる馬名の馬が6番から10番に並んでいたんだ。これはなにかあるとおもってそこを買ったんだがね」

重馬場の芝をのっそりと追いかけてきたディープボンドが3着に入ったおかげで、私の馬券はお持ち帰りの記念品、夢の抜け殻となったのである。

珈琲を飲んでいると、疲れ切った原田がやってきた。原田は新宿でスカウトマンをしている。

「昨夜、面談した子がね、夜のうちに自殺未遂をしたらしくて。警察に呼ばれて参っちまったよ」

女たちに苦しい時代はつづく。

原田は「弱い女はどこまでいっても弱い。女だろうと男だろうと、強いやつは強いのだ」とリバティアイランドから買うらしい。

私はどうしようかと新聞をみていると、エピファネイア産駒がいる。シーザリオにとって秋華賞は、出場すら叶わなかった幻の舞台だ。

モリアーナというのはスラブ神話の風の女神らしい。占星術では、いまの時代は「風の時代」だということだから、モリアーナには追い風もふくだろう。

 

 旅に病んで夢は枯野を駆け回る

 

まるでシーザリオの辞世の句である。

大転換期。女たちに幸あれ。

 

(2023.10.15)