Palais idéal

物置のような雑貨屋のような、紙のような文のような

2023-01-01から1年間の記事一覧

たそがれは風を止めて

「最近はどうしてたんだい」 店に入ると、スカウトマンの原田が話しかけてきた。 仕事が立て込んでいて、なかなか競馬に向き合うことができない期間が続いた。気づけば年末が迫っている。急に冷え込んできていて、冬用のコートをだすべきか迷っている。 「花…

都会の夢は夜ひらく

はてさて、菊花賞、どうしたものか。 「シュヴァルドール」のいつもの席で新聞を広げていると、アルバイトの花ちゃんが原田相手に話しているのが聞こえてきた。 「月に1度は、伊勢丹に行くんですよ。なんにも買わなくていいんです。ただ眺めているだけで幸…

夢よ風よ

店に入るとめずらしく鳩麦さんが話しかけてきた。 「先週は散々だったんだって」 私と原田は先週の3日間開催の週に京都に遊び、京都大賞典の日、ピカピカの京都競馬場に赴いたのであった。 「出場した馬の中で、ハヒフヘホから始まる馬名の馬が6番から10番に…

凱歌をあげよ!

ドアを開けると、珈琲の香りが漂ってきた。 カウンターには今日もすでに、スカウトマンの原田が座っている。鳩麦さんがカウンターの向こう側で、ゆっくりと珈琲を淹れている。 開店10分前。 新聞をみていた原田が 「凱旋門賞ってのは、やっぱり日本の悲願っ…

彼岸花の咲く頃にゃ

喫茶「シュヴァルドール」のドアをあける。カウンターの中でマスターの鳩麦さんが、せわしなく立ち働いている。ちらとこちらをみてすぐに仕事にもどる。まだオープン前なのだが、常連の私たちはこっそり入れてもらっている。 カウンターにはすでにひとり、歌…